幸せな結末
「大丈夫、今は眠ってる」

東雲さんが私の質問に答えた。

「この度は、いとこがご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした」

一也さんが東雲さんに向かって頭を下げた。

「顔をあげて」

東雲さんに言われ、一也さんは顔をあげた。

顔をあげても、一也さんは申し訳なさそうに目を伏せていた。

「美香ちゃんは、何があって東雲さんのお宅に?」

私の質問に、東雲さんは眼鏡の奥の目を細めた。

「スーパーへ行った帰り道に、彼女に声をかけられたんだ。

“あたしを5万で買ってくれないか?”、って」

「えっ…?」

その言葉の意味は、わかっていた。

「断ったよ、何てバカなことをしてるんだって思って。

それに俺には行きずりの女と寝る趣味はない」

東雲さんのその言葉に顔を紅くしたのは、理彩さんだった。
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