アリスズ

「アディマ!」

 訪問したアディマに、ケイコはとても嬉しそうにソファから立ち上がる。

「よく来たね」

 それを嬉しく思いながら、彼は我知らず瞳を緩めていた。

 叔母は意地は悪いが、カンはいい。

 彼女を呼び出した理由の半分は、ケイコに関することだと分かっているのだ。

 だから、こうして同行してきてくれたのである。

「ダイさんが歩いてて…びっくりした」

 この控え室に、ダイエルファンが来たという。

 珍しいと思っていたら。

「アディマの叔母様に…お礼を言っておいて欲しいって」

 ことづてを預かったの。

 ケイコが、少し笑顔のニコニコを増やした。

 ダイが、元気になったことが嬉しかったのだろう。

 ああ。

 彼の命を救ったのは、叔母だ。

 義理堅いダイのことだから、礼を言わないまま素通りは出来なかったのだろう。

「叔母様が戻ってきたら、紹介するから直接言う? って聞いたんだけど…」

 その笑顔に、困った色が混ざる。

 それには、アディマも苦笑にならざるを得なかった。

「ダイエルファンでは…難しいだろうね」

 彼が、自分からアディマに語りかけることは少ない。

 アディマが、それを気にするのではない。

 ダイが気にするのだ。

 身分の高い者に、自分から話しかけるのは失礼なことだと思っているのだろう。

「でも、本当にダイさんが元気になってよかった…光もちゃんとピカピカしてて…あれならすぐ元気になるわ」

 おや?

 彼女が嬉しそうに言ったダイの様子に、アディマは少し違和感を覚えた。

 そして、すぐに気づく。

 彼女が、人に知られないようにしていた自身の魔法の話を、言葉の中に織り込んだことに。

 また少し、変わったのだろうか。

「…何?」

 じっとアディマに見つめられ、ケイコは頬を赤くしながら見上げてくる。

「僕は…どんな光に見える?」

 だから──初めて、聞いてみた。
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