アリスズ
☆
とりあえず、アディマの部屋に招かれる。
明るい太陽の差し込む廊下で、語り合う事ではなかったのだ。
ロジューは、さっぱり気にしていなかったようだが。
一体。
景子が寝ている間に、一体どんな話が、このイデアメリトスの中で行われていたのか。
ソファに腰かけてから、ようやく景子は大きな息をつくことが出来た。
ロジューの歩きに早足でついてきた挙句、あんな話だったのだ。
まともな息なんか、出来ていなかった。
「ええと…」
イデアメリトスの世継ぎなのだから、たくさんの使用人を侍らせているのかと思ったが、本当に誰もいない。
それが逆に、景子をびびらせる。
「身体の方は、もう大丈夫かい?」
しかし、アディマの声は、これまでと何ら変わらず優しいものだった。
さっきのロジューの爆弾発言など、どこにもなかったかのように。
「あ、うん! 大丈夫。もう元気」
元々、丈夫な身体だ。
動き回っていれば、すぐなまった身体は元に戻るだろう。
植物を目の前に与えておけば、なおのこと早いに違いない。
「そうか…それはよかった」
微かに混じる苦味は、あの事件のことを思い出しているからか。
それが、彼がいま東翼に一人しかいない理由だ。
「本当に、本当にもう元気だから!」
景子は、必死にそれをアピールした。
アディマに、気に病まないで欲しかったし、彼にも早く元気になってほしかったのだ。
そんな景子を、彼は眩しそうに目を細めて見る。
あ、いや、そんな。
見つめられるだけで、景子の顔には血が集まってきてしまうほど。
カァっと耳まで熱くなった。
「さっき、叔母上様が言っていた話だけど…」
そんな、いま大変な状態の景子に、彼がゆっくりと危険な言葉を語り始める。
「ケイコが嫌でなければ…真面目に考えてもらえないだろうか」
アディマは、その瞳に痛切な色をよぎらせた。
景子に無理強いをしないよう、最大限の努力をしている──そう見えたのだ。
「アディマ…何か困ってる?」
景子には、そっちの方が気がかりだった。
とりあえず、アディマの部屋に招かれる。
明るい太陽の差し込む廊下で、語り合う事ではなかったのだ。
ロジューは、さっぱり気にしていなかったようだが。
一体。
景子が寝ている間に、一体どんな話が、このイデアメリトスの中で行われていたのか。
ソファに腰かけてから、ようやく景子は大きな息をつくことが出来た。
ロジューの歩きに早足でついてきた挙句、あんな話だったのだ。
まともな息なんか、出来ていなかった。
「ええと…」
イデアメリトスの世継ぎなのだから、たくさんの使用人を侍らせているのかと思ったが、本当に誰もいない。
それが逆に、景子をびびらせる。
「身体の方は、もう大丈夫かい?」
しかし、アディマの声は、これまでと何ら変わらず優しいものだった。
さっきのロジューの爆弾発言など、どこにもなかったかのように。
「あ、うん! 大丈夫。もう元気」
元々、丈夫な身体だ。
動き回っていれば、すぐなまった身体は元に戻るだろう。
植物を目の前に与えておけば、なおのこと早いに違いない。
「そうか…それはよかった」
微かに混じる苦味は、あの事件のことを思い出しているからか。
それが、彼がいま東翼に一人しかいない理由だ。
「本当に、本当にもう元気だから!」
景子は、必死にそれをアピールした。
アディマに、気に病まないで欲しかったし、彼にも早く元気になってほしかったのだ。
そんな景子を、彼は眩しそうに目を細めて見る。
あ、いや、そんな。
見つめられるだけで、景子の顔には血が集まってきてしまうほど。
カァっと耳まで熱くなった。
「さっき、叔母上様が言っていた話だけど…」
そんな、いま大変な状態の景子に、彼がゆっくりと危険な言葉を語り始める。
「ケイコが嫌でなければ…真面目に考えてもらえないだろうか」
アディマは、その瞳に痛切な色をよぎらせた。
景子に無理強いをしないよう、最大限の努力をしている──そう見えたのだ。
「アディマ…何か困ってる?」
景子には、そっちの方が気がかりだった。