アリスズ

「まったく…甘やかしすぎだ」

 景子を自分のベッドにぽいと投げ捨てながら、ロジューはその縁にどすんと腰かけた。

「すみません…」

 自分が怒られている気がして、彼女は小さくなる。

 そんな彼女を、文字通り上から見下ろす。

 じろじろと不躾なほど。

「まあ…いい。毒が抜けたばかりで、湯浴みまでしたんだ。その上、愚甥にこんな時間まで好き放題されたなら、歩けなくなっても当然だな」

 ふぅ。

 顰めっツラのまま、彼女は天を仰いだ。

 あうう。

 ロジューの表現に、不適切なものが混じったことに気づき、景子はもっともっと小さくなった。

 何が起きたのか、知っている人間がいるということに、どうしても慣れない。

 イデアメリトスの世継ぎであるアディマには、プライバシーはとても少ないのだ。

「もう、今日はここでいいから寝ろ。あと1日しかないんだ…明日に備えて休め」

 掛布を放り投げながら、ロジューは景子に言いたい放題だった。

 っていうか。

「あと1日…?」

 ひっかかった言葉を、景子はつい唇に乗せていた。

「明後日、帰ると言っただろう? お前が愚甥と子を成せる機会は、とりあえず明日までだ」

 うわあ。

 風情もへったくれもなく、ロジューに語られて、景子は微妙な顔になってしまった。

「気合で懐妊しろよ…でないと、また都へ行く手間がかかるからな」

 こづかれて、睨み下ろされる目に耐えかねて、彼女はあらぬ方へと目をそらす。

 そっか。

 明日でダメだったら…またアディマに会えるのかぁ。

 ふと、そんな不謹慎なことを考えてしまった。

 胸のあたりで、ほわほわするその感覚を、景子が抱きかかえていると。

「くだらないことを、考えている顔だな」

 ロジューは──見逃してはくれなかった。
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