アリスズ
□
叔母の出立の前。
アディマは、見送りと称して西翼に顔を出していた。
叔母であり、第一妃候補の部屋へ顔を出す事に、誰一人と違和感を覚える者などいない。
それどころか、東翼でほとんどの使用人が出入り禁止になっている二日間、ロジューが彼の部屋にいたのではないかと、まことしやかに噂になっていたのだ。
部屋に入ると、そこには出発の準備を済ませた叔母と──ケイコがいた。
彼女は、一瞬アディマを見た後、恥ずかしそうにうつむいた。
「お発ちになられるのですね、叔母上様」
それに微笑みながら、彼はロジューに挨拶をする。
「挨拶とは、顔をこっちに向けて言うものだ」
挨拶など、ただの隠れ蓑に過ぎないことを知っている叔母は、まったくもって容赦がなかった。
「ケイコ…身体は平気かい?」
そんな叔母の厭味をさらりと流し、今日荷馬車に揺られる身を案じる。
頬の色が赤く染まって、とても輝いて見えた。
「歩いて帰るんじゃあるまいし…甘やかすなと言っておるだろうが」
具合が悪くなったら、荷馬車でいくらでも寝られる。
どうにも叔母は、アディマが彼女に構いすぎることを、快く思っていない。
イデアメリトスの世継ぎだからなのか、単なる彼女の性格によるものなのかは、よく分からなかったが。
「大丈夫よ…アディマ……」
いつも通り、元気な顔をするケイコが、しかし余韻を残すように言葉を失った。
落ち着かなく目が動く。
「何か…あったのか?」
そう悪いことがあったようには思えなかったが、アディマは気になって問いかけてみた。
明日からは、問うことさえ出来ないのだから。
「あ…あのね…あの……」
ケイコが、視線を落とす。
「言っておいた方がいいのか…分からないんだけど…間違ってるかもしれないんだけど……」
視線を上げ、何度も戸惑いに唇をよどませながらも、アディマに何かを伝えようとする。
「あのね…ここが…光ってるの」
ぴかぴかって。
ケイコの両手は──おなかにあてられた。
叔母の出立の前。
アディマは、見送りと称して西翼に顔を出していた。
叔母であり、第一妃候補の部屋へ顔を出す事に、誰一人と違和感を覚える者などいない。
それどころか、東翼でほとんどの使用人が出入り禁止になっている二日間、ロジューが彼の部屋にいたのではないかと、まことしやかに噂になっていたのだ。
部屋に入ると、そこには出発の準備を済ませた叔母と──ケイコがいた。
彼女は、一瞬アディマを見た後、恥ずかしそうにうつむいた。
「お発ちになられるのですね、叔母上様」
それに微笑みながら、彼はロジューに挨拶をする。
「挨拶とは、顔をこっちに向けて言うものだ」
挨拶など、ただの隠れ蓑に過ぎないことを知っている叔母は、まったくもって容赦がなかった。
「ケイコ…身体は平気かい?」
そんな叔母の厭味をさらりと流し、今日荷馬車に揺られる身を案じる。
頬の色が赤く染まって、とても輝いて見えた。
「歩いて帰るんじゃあるまいし…甘やかすなと言っておるだろうが」
具合が悪くなったら、荷馬車でいくらでも寝られる。
どうにも叔母は、アディマが彼女に構いすぎることを、快く思っていない。
イデアメリトスの世継ぎだからなのか、単なる彼女の性格によるものなのかは、よく分からなかったが。
「大丈夫よ…アディマ……」
いつも通り、元気な顔をするケイコが、しかし余韻を残すように言葉を失った。
落ち着かなく目が動く。
「何か…あったのか?」
そう悪いことがあったようには思えなかったが、アディマは気になって問いかけてみた。
明日からは、問うことさえ出来ないのだから。
「あ…あのね…あの……」
ケイコが、視線を落とす。
「言っておいた方がいいのか…分からないんだけど…間違ってるかもしれないんだけど……」
視線を上げ、何度も戸惑いに唇をよどませながらも、アディマに何かを伝えようとする。
「あのね…ここが…光ってるの」
ぴかぴかって。
ケイコの両手は──おなかにあてられた。