アリスズ
☆
屋敷の中。
「おや…面白い」
景子を抱えてきたスレイを見て、ロジューが本当に笑みをたたえた声で出迎えてくれた。
「ジャングルで転がっていたぞ」
彼は、景子の事情をいたって簡潔に表す。
人間の扱いとは、ちょっと違ったが。
「そうかそうか…しかし、そうしているとお似合いだな」
ばんばんとスレイの腕を叩く振動が、腕の中の彼女にもはっきりと伝わってくる。
「馬鹿なことを言っていないで…これを受け取れ」
炸裂するため息が、景子の上に降ってくるような気がした。
「あの…もうここで…」
二人の空気にいたたまれなくなり、彼女は下ろしてもらおうとした。
彼の望む最短時間なるものから、とっくに期限切れな気がしたのだ。
それに、ロジューに受け取ってもらうわけにもいかない。
彼女もまた、景子と同じ妊婦なのだから。
「ついでに、部屋まで運んでやってくれ。頼むよ、スレイピッドスダート」
さすがのロジューも、一応自重しているようだ。
しかし、スレイに景子の移送を頼むのは、許して欲しかった。
だって。
ほらきた。
またも、ため息が洩らされたのだ。
この息は、景子を縮みあがらせる。
自分が、ただの面倒の塊になった気にさせられるのだ。
まだ、自分ではいずっていた方が、マシに思わされる。
景子は、ロジューに目で訴えていた。
視線には気づいてくれたが、彼女を助ける気配を見せることはない。
「スレイは、自分がやりたくないことは絶対にやらん男だ」
景子の部屋への道のりを一緒に歩きながら、ロジューはニヤニヤしている。
「その代わり、やると言ったらきっちりやる男だぞ…態度は最悪だがな」
本人を目の前にして、彼女は言いたい放題だ。
「夫なんだから、何でも頼んでいいからな」
そして、とどめの一言。
景子は、そーっとスレイを見上げてみる。
ギロリ。
隻眼の瞳は、とてもロジューの言葉を肯定しているようには見えなかった。
屋敷の中。
「おや…面白い」
景子を抱えてきたスレイを見て、ロジューが本当に笑みをたたえた声で出迎えてくれた。
「ジャングルで転がっていたぞ」
彼は、景子の事情をいたって簡潔に表す。
人間の扱いとは、ちょっと違ったが。
「そうかそうか…しかし、そうしているとお似合いだな」
ばんばんとスレイの腕を叩く振動が、腕の中の彼女にもはっきりと伝わってくる。
「馬鹿なことを言っていないで…これを受け取れ」
炸裂するため息が、景子の上に降ってくるような気がした。
「あの…もうここで…」
二人の空気にいたたまれなくなり、彼女は下ろしてもらおうとした。
彼の望む最短時間なるものから、とっくに期限切れな気がしたのだ。
それに、ロジューに受け取ってもらうわけにもいかない。
彼女もまた、景子と同じ妊婦なのだから。
「ついでに、部屋まで運んでやってくれ。頼むよ、スレイピッドスダート」
さすがのロジューも、一応自重しているようだ。
しかし、スレイに景子の移送を頼むのは、許して欲しかった。
だって。
ほらきた。
またも、ため息が洩らされたのだ。
この息は、景子を縮みあがらせる。
自分が、ただの面倒の塊になった気にさせられるのだ。
まだ、自分ではいずっていた方が、マシに思わされる。
景子は、ロジューに目で訴えていた。
視線には気づいてくれたが、彼女を助ける気配を見せることはない。
「スレイは、自分がやりたくないことは絶対にやらん男だ」
景子の部屋への道のりを一緒に歩きながら、ロジューはニヤニヤしている。
「その代わり、やると言ったらきっちりやる男だぞ…態度は最悪だがな」
本人を目の前にして、彼女は言いたい放題だ。
「夫なんだから、何でも頼んでいいからな」
そして、とどめの一言。
景子は、そーっとスレイを見上げてみる。
ギロリ。
隻眼の瞳は、とてもロジューの言葉を肯定しているようには見えなかった。