アリスズ
□
「不満か…リサードリエック」
府長を退席させた後、彼の方を顧みる。
「いいえ、我が君」
しかし、リサーは即答した。
「ここまで進んだ話に、私はもはや異論はありません…ただ」
その表情が、苦く、そして厳しくなる。
眉間に深い皺が刻まれた。
「あの者は、妃として宮殿の中におとなしくしているでしょうか」
それが、本当に気がかりだと。
リサーを悩ませているのだ。
ああ。
アディマは、苦笑した。
「農林府の仕事は、続けたいそうだ」
さすがは、ケイコと共に旅をしただけのことはある。
的確な心配だった。
「役人を続ける妃など、前代未聞ではありませんか」
ぎょっと、リサーの目がひんむかれる。
ケイコと一緒に、農村に行けと言った時の彼を思い出して、アディマは笑った。
まさに、あれと同じ顔だったのだ。
「だが、ケイコにしかない知識もたくさんある…彼女が、この国の穀物の未来を握っているぞ」
笑いながら、アディマは彼を諭した。
「それは…そうですが。他の者に知識を伝えることで、別に本人が出て行かなくとも…」
リサーもまた、慎重派だ。
アディマも、そうできる事ならそうしたいという本音はあった。
放っておくと、彼女はすぐに飛んで行ってしまいそうな性格をしているのだから。
いまはまだ、子供のことで遠くには行かないだろうが。
「彼女が自分で畑を見なければ、分からないこともある」
彼女の魔法は、命を見る魔法だから。
この婚姻のために、アディマはケイコの魔法について、リサーにもダイにも伝えた。
今日は、太陽府の者にも。
この先、隠すことはない。
人々の知る魔法とは、イデアメリトスの魔法だ。
ケイコにも、同じ力があると自然に錯覚してくれる。
その錯覚が。
彼女を守る力の、ひとつになるのだ。
「不満か…リサードリエック」
府長を退席させた後、彼の方を顧みる。
「いいえ、我が君」
しかし、リサーは即答した。
「ここまで進んだ話に、私はもはや異論はありません…ただ」
その表情が、苦く、そして厳しくなる。
眉間に深い皺が刻まれた。
「あの者は、妃として宮殿の中におとなしくしているでしょうか」
それが、本当に気がかりだと。
リサーを悩ませているのだ。
ああ。
アディマは、苦笑した。
「農林府の仕事は、続けたいそうだ」
さすがは、ケイコと共に旅をしただけのことはある。
的確な心配だった。
「役人を続ける妃など、前代未聞ではありませんか」
ぎょっと、リサーの目がひんむかれる。
ケイコと一緒に、農村に行けと言った時の彼を思い出して、アディマは笑った。
まさに、あれと同じ顔だったのだ。
「だが、ケイコにしかない知識もたくさんある…彼女が、この国の穀物の未来を握っているぞ」
笑いながら、アディマは彼を諭した。
「それは…そうですが。他の者に知識を伝えることで、別に本人が出て行かなくとも…」
リサーもまた、慎重派だ。
アディマも、そうできる事ならそうしたいという本音はあった。
放っておくと、彼女はすぐに飛んで行ってしまいそうな性格をしているのだから。
いまはまだ、子供のことで遠くには行かないだろうが。
「彼女が自分で畑を見なければ、分からないこともある」
彼女の魔法は、命を見る魔法だから。
この婚姻のために、アディマはケイコの魔法について、リサーにもダイにも伝えた。
今日は、太陽府の者にも。
この先、隠すことはない。
人々の知る魔法とは、イデアメリトスの魔法だ。
ケイコにも、同じ力があると自然に錯覚してくれる。
その錯覚が。
彼女を守る力の、ひとつになるのだ。