アリスズ

「キキュ…───」

 やっぱり発音できないまま、リサーが歩きながら説教の続きを始めたようだ。

 名前を知ろうとしたのは、呼びかける手段がなくては注意を引けないと思ったからなのか。

 真面目そうな人だ。

 景子にも、だんだんリサーの性格が見えてきた。

 この旅のメンバーの中では、アディマの次に身分が高く、そして旅そのものの仕切り役のようだ。

 だから、不確定要素の菊や景子を、若干警戒している様子が見てとれた。

 アディマの言うことには従うが、それ以外は彼の言うことに従わなければならないのだろう。

 ダイは、完全なる護衛。

 そして女性は、おそらく身の回りの世話をする人、と言ったところか。

 景子は、この女性を見た。

 さっき、一瞬だけリサーについて笑っていた気がしたが、また彼女はつんと澄ましていて。

 視線に気づいたのか、女性はちらと景子に瞳を投げる。

「ケイコ」

 自分の胸に触れて自己紹介すると、彼女は表情を曇らせた。

 呼んだり名乗ったりしなければならないのだろうか──その段階から不満なようだ。

 しかし、アディマがちらりと彼女を見ただけで、態度が豹変した。

 コホンと咳払いをした後、長い指を自分の襟元にあてたのだ。

「シャンデルデルバータ」

 また長ったらしい名前が出たので。

「シャン?」

 そう復唱したら。

「シャンデル」

 ぴしゃりと修正が入った。

 そう呼べばいいらしい。

「ありがとう、シャンデル」

 景子は、応えてくれたのが嬉しくなって笑顔になった。

 ぷいと、彼女は向こうを向いてしまったが。

 アディマ、リサー、ダイ、シャンデル、菊──そして、景子。

 やっと、全員の名前を知ることが出来たことになる。

「アリガトウ…」

 また、アディマが呟いていた。
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