たとえばあなたが



せっかくの楽しい時間が、崇文の登場で散々な目にあってしまった。



「もう~、ほんとすいませんでした…」

千晶は肩を落として席に戻ると、

「また今度、改めてお詫びさせてください…」

と力なく言った。



「お詫び?」

「だって、あんな酔っ払いの相手をさせてしまったし…」

(おまけに彫が深いとか超失礼なこと言うし…)

ところが小山はまったく気にする様子はなく、

「僕はああいう人の相手、意外とうまいんですよ。だから気にしないで」

と言って、まだほのかに湯気を立てている豚肉をほおばった。



「私は彫の深い顔って好きよー」

カウンターで和子が言う。



小山は振り向いて、

「ありがとうございます。これ、うまいです」

と、陶器皿を指差して笑った。















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