たとえばあなたが
玄関から続くフローリングの床には、ビニールが敷き詰められている。
まるで、見知らぬ人の家に来てしまったようだった。
「こらっ!」
すぐに警察官が追って来た。
家の中にいる警察官たちも、何事かとこちらを見ていた。
ここで立ち止まっては、また崇文の部屋に連れて行かれてしまうかもしれない。
少女は、思い切って家の中に上がりこみ、そこから真っ直ぐ走ってリビングへ入った。
…―
足がすくんだ。
息が切れて、座り込みたいほどなのに、動けなかった。
「…パパ…?」
父に呼びかけてみたけれど、誰にも聞こえなかったかもしれない。
口だけが動いた、そんな気がした。
自分の声が、聞こえない。
周りの音も、聞こえない。
突然の静寂が、少女を取り巻いた。