たとえばあなたが



地上に出ると、冷たい風が吹き付けてきた。

大きなマンションが立ち並ぶ方面に歩いて行くと、徐々に人が少なくなってきて、余計に寒く感じる。



千晶がいる左側はまだしも、右の肩はみるみる冷えていく。

夜の静けさと追い風の強さで、自然と口数が少なくなった。



やがて、沈黙の隙間を埋めるように、小山は気になっていたことを聞いた。

「…佐山さんは、彼氏できたの?」

コンパの連投を続けていたようだけれど、効果があったのだろうか。



「ふふ、まだ成果は出てないみたい」

「そうかぁ」

なかなか思うようにはいかないようだ。



そんな中、今年のイルミネーションは千晶と行けないとなると…―

(恨み言のひとつやふたつは飛んできそうだな…)

拗ねる萌を想像して小山がニヤついていると、千晶が不思議そうに覗き込んだ。



「どうしたの?」

「いや、なんでもない」

そう言いながら、小山の顔はまだ笑っていた。








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