たとえばあなたが
「部長…」
「頼む、松田!営業企画部からひとり出せと言われて、どうにもならないんだ」
木村は絨毯に額をこすりつけるようにして、頼む、と繰り返した。
(頼むって言われても…)
はいわかりました、で済む話ではない。
「いきなり辞めろと言われても無理です。頭を上げてください、部長」
それでも木村は、頑なに頭を下げ続けた。
「本当にすまない。お前しかいないんだ、頼む」
「部長、頭を…」
「頼む!」
このまま堂々巡りでは、話が進まない。
松田は途方に暮れて、中腰の体をソファに下ろした。
お前しかいないと木村は言う。
けれど松田は、そんなことはないと思った。
高卒で働き始めた自分には、後輩だって大勢いる。
自分は仕事のミスも少なく、木村にもそれなりに評価されていると信じていた。
それなのに…―
「どうして…俺なんですか」