たとえばあなたが
そもそも見せられた記事はまったくのでたらめで、松田自身は横領などしていないのだから、納得のいく説明などあるわけない。
だけど、せめてどうして自分が選ばれてしまったのか、理由を知る権利はあると思った。
「…本当に、すまない…」
木村が、両手両膝を絨毯につけたまま、ようやく顔を上げた。
木村の目には涙が浮かんでいて、松田はそれに嫌悪感を抱いた。
なんだか悲劇の主人公を演じているように見えてならない。
ずっと尊敬して目標としてきた木村に、悪い印象を覚えたのは初めてだった。
「俺には…わかりません」
無性にこみ上げてくる感情は今までに感じたことがない類のもので、松田のこめかみと頬がひきつった。
「部長は、俺がこれから家庭を持つって知っているのに、どうしてこんな酷なことを言うんですか」
「…会社を守るためには、こうするしかないんだ」
木村が弱々しい声で答えた。
「会社を…守る?」
松田は、体中に鳥肌が立つのを感じた。