たとえばあなたが



松田が何も答えずに立っていると、明子は困ったような笑顔を松田に向けた。

「…ごめんなさいね、仕事のこと」

「…!」

松田の体中の血が逆流した。



明子も知っていたのだ。

今日、松田が退職を告げられることを。



「でも聡くんなら他でも絶対大丈夫って、うちの人が言ってたわ」

いつもなら、松田が家に来るとリビングで一緒にテーブルを囲む明子。

今日は来なかったと思えば、こういうことだったのか。



「あの人の気持ちもわかってやってね」

と明子が言った。

「…部長の、気持ち…?」

「あなたに言うのがつらいって、ここ数日ずっと悩んで………っ?!…さとしく…!」



ダイニングテーブルに、鮮血が飛び散った。




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