たとえばあなたが



社内は空調が効きすぎて暑いほどだ。

加えて換気ができないビルのため、空気が悪い。

だからと言って、こんな天気の日に外回りは気乗りがしない。



千晶は頬杖をついて、窓の外を眺めた。



朝からずっと、止まない雨。

月初め、しかも月曜日だというのに気分を憂鬱にする。



「千晶、お茶でも淹れに行かない?」

という萌の誘いに、千晶はお気に入りの茶葉を持って給湯室へ向かった。



「玄米茶?紅茶好きの千晶が、珍しいのね」

「なんかね、こういう気分なの」

熱湯をポットに注ぐと、途端に香ばしい香りが給湯室に広がった。

「ニッポン!って感じね。いい香り」

と、萌が微笑んだ。

「ほんと。安らぐよね」

ずいぶん前にお揃いで買ったマグカップにお茶を注いで、千晶は萌と並んで給湯室を出た。




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