たとえばあなたが



廊下に出ると、

「あ、雨やんだね。小山さん、もうちょっと外出時間をずらせば降られずに済んだのに」

と萌が言った。

千晶が窓の外を覗くと、ついさっきまで土砂降りだった雨が上がっていた。

「…そうね。松越じゃ社用車も使えないし、濡れたでしょうね」



小山が松越に向かって、そろそろ1時間が経つ頃だ。

今頃ふたりは、何を話しているのだろう。



崇文が千晶に隠している【何か】。

小山がずっと前からこの街にいたかもしれないという【謎】。

そのふたつに、関連があるのだろうか。



千晶の人間としての本能が、今ふたりを合わせてはいけないと告げていた。



けれど今の千晶には行動を起こすだけの手がかりが何もなく、どうすることもできない。

どうか自分の思い過ごしでありますように。

ただ、そう願うしかなかった。




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