この出会いが奇跡なら-上-
もうすぐで唇がくっつくと言うところで、あたしはどんっと成斗の体を押した。
「――やめて!」
「いってぇ、何すんだよ」
「うるさいッ、もうこういう事しないで」
――忘れかけていた。真衣のあの言葉。
真衣にもキスしたんでしょう。なのに、その勢いであたしにまでキス出来ると思ってんの。
「………」
もう、つらすぎるよ。痛いんだよ。
こんな事、考えたくもないのに、
「…女の子なら、誰でもいいんだね」
あたしの口は、言うことを聞いてくれない。
「…あ?」
あたしがそう言うと、成斗の冷たい目があたしに直撃した。
出た。相手を一瞬にして黙らせる、成斗の冷たい目。でもそんなんじゃあたしは絶対引き下がらない。
「…もう、いいよ」
「だから、何が」
辛い。辛すぎる。あたしの気持ちも知らないで。
これ以上、あたしを傷つけさせないで。
「ごめん、今日はありがとう。じゃあ」
「おい、待てよ」
低い声でそう言われ、不意にガシっと腕を掴まれてしまった。