この出会いが奇跡なら-上-



『したんだろ?万引き』


低い声で、教師がそう言った。


「あいつが万引きなんてするはずねぇよ」

「金に困った事なんてないと思うけど…あいつ」


光輝と悠紀が成斗を庇うように低い声でそう言う。




……何でもう確定した様な口調で言うの。


まだ成斗がやったって、決まってない。

それをもう決まったかの様に言葉を成斗にぶつける。


そんな教師が許せなかった。




『お前は普段から行いが悪すぎる。校則違反だって次々と破っていくだろう。やってないと言っても、一番に疑われのはお前なんだよ。………そんな奴、うちの学校には要らないんだよ』




――…何、それ。


………成斗は今、どんな気持ちで、その教師の言葉を聞いてるんだろう。



平気なはずない。

悪ぶって強がってるけど、誰だって“要らない。”なんて言われたら、心はすぐ音をたてて壊れてしまう。




『退学だ』


教師の口から出た言葉。


その次に成斗が言った言葉に、あたし達は耳を疑った。



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