*エトセトラ*
「モカちゃんって黒崎の彼女?後藤会ったことあんの?」

「ああ、何度か会ったし、二人でいるところもたまに見るけど」

「どんな感じ?やっぱモデル系の美女?」

「美女っつーより…、可愛くて癒し系かな」

「おお!超見てー!黒崎、俺たちにも紹介してくれよ!」



「……断る」

「隠さなくてもいいだろ!」

「別に隠してねえけど、わざわざ紹介したくない」

こいつらにモカを会わせたくない。恰好の餌食になりそうだ。

早く会話を終了させたい俺をよそに、後藤と他の奴等は勝手にモカのことで盛り上がる。


「黒崎って、モカちゃん以外には興味ねえから」

「彼女に一途っていう噂はマジなんだな」

「そうそう、モカちゃんといる時はいくら誘っても絶対来ねえし」

「確かに黒崎は付き合い悪い!今日は珍しく参加って、何かあったのか?」

「今日はモカちゃんが用事あるらしい」

ペラペラ喋る後藤に、だからお前が言うな、とまたもや鋭い視線を向けるが効いちゃあいない。


でも、確かに後藤の言う通り、モカは今日の夜、木下や仲の良い友人たちと「女子会」をするそうだ。

なので、俺がこうしてサッカー部の集まりに参加したのは、モカがいないから。

そんな理由までわざわざ言わないが、後藤はもちろん気付いている。


サッカー部の奴らで、モカを知っているのは後藤だけ。得意げに喋る後藤のおかげで、他の奴らはさらに食い付いてきた。

「なぁ黒崎、彼女のモカちゃんってどんな子?」

「どんな子って…、何で説明しなきゃいけねえんだよ」

「だって俺ら見たことねえもん!黒崎が夢中になる女ってどういう女!?」

「言いたくねえ」

「もったいぶんなよ!」


皆から「教えろ」と責められ、なかなか会話は次の話題に移らない。


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