*エトセトラ*
「せっかく、和泉君と一緒に夏の思い出作れるって思ったのにな…」

残念そうにポツリと呟くと、和泉君は私に振り向いた。あれほどガンコだったのに、少しだけ気まずそうな顔になっている。


「……そんなに行きたいのか?」

「うん、行きたい…」

しゅんとしながら答えると、和泉君はさらに困ったような表情になる。


…あれ?ちょっと効いてる?

もうちょっと押してみようかな…。


「水着も買ったんだよ?」

本当は買ってないけど…。


「モカ…?」

「和泉君と一緒に行きたいの…」

上目使いでじっと目を見つめながら言うと、和泉君が「…っ」と言葉を詰まらせた。


……いけるかも?もう少し押してみよう…!!

何も答えない和泉君に寄り添うように近づき、「お願い…」と首を傾げてみた。効いてるのかどうかは分からないけど。


和泉君は手で顔を覆いながら、私から視線を外している。


「……ずるいぞモカ」

「一緒に行ってくれるの?」

「……しょーがねぇ…」


効いたんだ!すごい!和泉君を説得できた!!

この手、これからも使えるかも…。ようやく和泉君に「うん」と言わせる方法を見つけ、しめしめと心の中で笑った。


「和泉君、ありがとう」と、ニコニコしながら和泉君に言うと、ジロリと無言の視線を返された。

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