さぁ、跪いて快楽を乞え!
「橘」

「はい」

運転中でハンドルから手を離せず薫の方を向けない橘が、バックミラーでちらり、と薫の顔を確認する。

「命令だ。俺を労(イタワ)れ」

「何故です?」

待て待て。
その返事は可笑しいだろう!

「理由は問うな。これは命令だ」

「……畏まりました」

理由を聞けないのがとても不満だったようで、橘は舌打ちでもしそうな勢いで眉間に皺を作り、了解した。

「眉間に皺を寄せると老けるぞ」

「貴方なんぞに言われたくありません」

「お前なあ……!」
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