SAYONARA
「何て言う気?」

「分からない。それとなく彼女を誘えばと言ってみるよ」

 今まで抱えていた気持ちがすっと軽くなる。

 その理由もすぐにわかる。

「今から美枝が家に来るけど、あんたはどうする? 一緒に来るなら朝食を準備するよ」

 甘い誘いに曖昧に微笑んだ。

 少し前に、朝、美枝と彼が一緒にいたのはこうしたことが原因だったんだろう。

 わたしを誘う彼が、美枝を誘わないわけがない。

「一度家に帰るよ。さすがに学校に行くのは早すぎる」

 息を切らし、また功が目の前を通り過ぎる。

 彼はあたしにとって初恋の人だった。

 でも、それ以上に幼馴染だった。
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