王国ファンタジア【氷眼の民】―ドラゴン討伐編―

さらに力を込める。


レインは歯を食いしばりオメガの右足に爪を立てるが、痛みのせいで腕に力がほとんど入ってはいない。


「悪あがきはよそう坊や。君は本当によく健闘した。神にも等しい私に掠り傷を負わすことができたのだからね。
だが御覧の通り、その傷も先ほど癒してしまったがな。無駄な努力だったというわけだ。
痛いだろう? 苦しいだろう? もういっそのこと死んでしまいたいだろう?
だけどまだ駄目。全然駄目だ。だって私は神なのだから。
人間とはいうのは敵という存在をすぐに殺したがる。
殺られる前に殺る。正当防衛。適当な言い訳を並べてすぐに殺してしまうだろう。
それはもったいなくないか? 人を殺めるのは簡単だ。首根を掻けばものの数秒で息たえる。
だが私はそんなことは絶対にしない。だってそうだろう、人という最高な玩具をすぐに壊してしまったらもったいないじゃないか。
悲鳴、涙、苦悶の表情。世界中どこを探しても、これらの行為をできるのは人間だけ。他の生き物には与えられなかった人間だけの特権。
神はなんのために人間という愚かな生き物を作ったと思う? 楽しみためさ。
手の平でのた打ち回る人間達を嘲笑うために、さげずむために。
そういう意味では、私ほど人間愛に満ち満ちた神は存在しない。素晴らしいだろう。
それに君は玩具としての無限大な可能性を秘めているんだ。それを途中で手放すようなことは私には到底出来ない。それこそ神への冒涜だ。
そうだな。しばらくは君の苦痛の表情と可愛らしい悲鳴を楽しむとしよう。
一通り鑑賞した後はとりあえずその傷口を塞いであげようかな。死んでしまったら玩具の価値がなくなるからね。
まずは……私の所有物だということを第三者にも分かるように、羽ペンで名前を書こう。どこかに落としてしまったら探すのが大変だからね。
君のそのすべすべな肌に、直接羽ペンで私の名前を刻んであげる。顔に掘ったらその可愛らしいフェイスが台無しだ。
二の腕あたりがいいかな? でも所有者の名前だけではどこか味気ないなぁ……。
そうだ! 「奴隷」という字を瞳に一文字ずつ刻もう!
これで所有者だけでなく、この玩具はオメガという人物の奴隷だということも一目でわかるようになるからね。
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