野良ライオンと文系女の猛獣使い
「少し黙れ」

「ヤッホー!シンさんに怒られた!」

「レオ」

「へーへーへー、自重しますよ。ジチョウ」


シンさんが睨むと金髪は肩をすくめて黙った。
シンさんはこっち──というかアタシを申し訳なさそうな目で見てくる。


ああ、気を遣われたってことね。うん。やっぱ、この人いいひとだわ。


そうこうしてるうちに、アタシの食器が空になった。
金髪達もなんか食後の水(だってタダだし)を飲んでたり。
加奈子はまだ食べ続けてるんだけど。まぁ、頼んだ量が尋常じゃなかったからね。
なんでこれで太んないかな?や、羨ましくなんてないけど。


「レオ」

「ん?あぁ…、時間ね。時間、そろそろ出ますかのう」

「あれ?レオ君、行っちゃうの?」


立ち上がりかけた金髪達を、加奈子が止める。

えーい、せっかく向こうからいなくなろうとしてんだから、引き留めんでも。


「デヒャヒャヒャ!!いや、カナちゃんと別れるのはツラいんだけど、俺様達にも用事がさー」

「そーなの?んじゃバイバイかな?」

「離れたくにゃい〜、ニャハハ。また会おうねー、あざちゃんも」

「……は?」


水を向けられると思わなかったから、思わず言葉に詰まる。
っていうか、どう反応したらいいのよ?二度と会いたくないってのが本音だけど、さすがに今日会ったばかりで失礼だしさ。


「…機会があったら、何処かで」


仕方ないから当たり障りないように応えておく。
もちろん、機会があったとしても会うつもりなんてないけど。


シンさんが伝票を取って歩いて行くと、金髪がこちらに投げキッスしながらそれを追いかけていった。
ちょっと寒気がする。


「ねー、あざとちゃん」

「何よ」

「楽しい人だったねっ!」

「……楽しいっていうより、騒々しいって感じじゃない?」

「そう?」

「そう」

「また会えるといーねー」

「アタシパス」

「何で?」

「ああいう、いい加減そうなのは苦手なのよ。知ってるでしょ?」

「ちゃんと話してみたら、楽しいかもよ?」

「ないわよ。多分イラつくだけ。出来たら、二度と会いたくないわね」


会わずに済むなら、それでいい。
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