野良ライオンと文系女の猛獣使い
「……すまん」


そう言ったのは、金髪の隣に座った大柄な男。
こんな奴と組んでいる割りには常識人みたいで、声には本当にすまなさそうな色を感じとれた。


「あ、いや、別に──」

「おんやぁ?シンさん、あざちゃんが気になんのぉ?いっがいっだにゃあ!!」

「……うるさい」


『あなたは悪くないんだから気にしないで』という主旨の言葉は、金髪が割り込んだせいで台無しになった。

シン、と呼ばれた大柄な方が「すまん」と再び謝罪してくるのに「いえ」とだけ応えて、食事を再開する。


うん、ダメだ。この金髪は果てしなくウザい。
さっさと、ごちそうさまして帰ろう。


そういう訳で、加奈子と金髪の会話を全てスルーして食事を続ける。
その間、シンさんも私と同じように会話をスルーし続けた。普段から金髪と組んでても、このテンションはウザいってことかな?
凄く共感できるけど。


「そういえばカナちゃんは彼氏とかいんの?」

「うん?いるよー。優しくてカッコいいのがさ」

「えー、マジかー!?」


と、いつの間にやら二人の会話は恋愛関連に走っていたらしい。
当然のように金髪が加奈子の事情を探って、加奈子は平然と『彼氏いる』と明言してのけた。
大方、加奈子を狙おうとしてたんでしょうけど……。


ふっ、金髪ザマァ。


とか思ったのは内緒……、にしなくてもいいか。だってこいつウザいし。


「そっかー、彼氏いんのかー。そっかー」

「レオ君は?」

「俺様?俺様は今フリーだよん!…あ、そうだ!!」

「うゆ?何かなっ?」

「俺、カナちゃんの間男になる!」

「ぶっ!?」

「……まおとこ?」


高らかに間男宣言をした金髪(と書いてバカと読む)に対して、吹き出したのはアタシだ。
加奈子は間男の意味が分かんなかったのか、首を傾げてるけど、アンタは知らないでいい。
とにかく、なんつーことを言いやがるんだ、この金髪は!

多少のウザさなら我慢できたけど、これは限界。
とりあえず一発ひっぱたいてやろうかと、柄にもないことを考えて、


「レオ」


と低い声に、出鼻をくじかれた。
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