野良ライオンと文系女の猛獣使い
私が呟いた言葉に、二人の声がピタリとやむ。


「ヒドイ!ヒドイよ、あざとちゃん!アタシにだって羞恥心くらいあるもんっ!!」
「あざちゃんヒデー。まだ二回しか会ってないのに、俺様もう常識はずれ扱いかよ!」


同時に喋るな。聖徳太子じゃないんだぞ私は。
それに、その大声をやめなさいってば。


「あざとちゃんってば、細かいこと気にしすぎだよ」

「細かくないでしょう?周りにも迷惑かかるし、恥ずかしいし」

「つまりあざちゃんは繊細っつーより、神経質な訳な」

「誰が神経質だ。誰が」


私が睨むと、金髪は高速で顔を背けて、お茶に手をつけた。
その口元が笑ってるような気がしてならないのは、気のせいだろうか?


「ねー、あざとちゃん」

「…何よ」


映画観て、昼食してるだけなのに、この疲れようはなんだ、一体。


「ちょっとお手洗い行ってくるね」

「ああ、退けってこと?」

言って席をずらす。
加奈子の席からだと、私の席が邪魔して通路に出られないのだ。
案外狭い店……、まあ値段が値段だったし、狭くても仕方ないかな、と思う。


「カナちゃん行ってらー」

「うん。行ってきます」


手を振る金髪に、加奈子の方は『ビシッ』と敬礼を返した。
どうでもいいけど、どこいく気だアンタは。


で、加奈子がトイレに入って行くのを見送って、食事を再開しようとした時に気付いた。


「……」
「……」


ちょっ、二人きりじゃん!?
いや、当たり前なんだけど、私一人でコイツ相手はちょっと厳しいわよ。会話が成立しそうにないし。
あ、でもそもそもコイツに気を遣う必要なんてないんだから、普通にしてればいいのかしら?
いや、でも、ああもう!


「なー、あざちゃん」

「な、何?」


考え事をしていたせいで、声が少し上ずった。
うわ、恥ずかしい……。


金髪はそんなこと気にしなかったように、タバコの箱を取り出して笑う。


「悪い、ヤニ切れた。ここで吸ってもOK?」

「え、ああ……別にいいけど」

「サンキュ。すんませーん!灰皿くだしあ」


片手を挙げて、金髪は近くの店員を呼び止めた。
って、くだしあって何だ?

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