男子と女子
梨本さん
梨本さんがバラの花好きだから
高いバラの香りの香水を買ったけど
どうもその匂いは自分にはきつくて
いまだに香水の封を開けれなかった


「おはようございます梨本さん」
「あ、おはようございます」

ふわっと笑う梨本さんがすごくキレイで可愛くて
胸がキュゥっとなる…


「今日は空がすごく青い」

持っていた文庫本をぱたんと閉じて
梨本さんは空を仰いだ
つられてわたしも空を見上げる

スズメが2羽スーっと飛んでいった

梨本さんが歩き出したので
わたしもそれにつられて歩く

隣に並ぶも少し照れくさくて
ちょっぴり離れて歩く

本当はもっとくっつきたい
手を繋ぎたい

でも「梨本さん」なんて呼んでるわたしには
とてもじゃないがそんな勇気ない
朝の挨拶だって心臓が飛び出るくらい緊張する



無言のまま歩いて
チラと梨本さんの顔を覗く

すると梨本さんもこっちを見ていて
びっくりして思わず目をそらしてしまった


「どうかしました?」

黒メガネの奥の優しい目が
笑顔で細くなる


どうしてこの人は
こんなにわたしのツボをついてくるのだろう



「梨本さん…」


好きです


そう口に出しそうで
慌てて顔を覆う

梨本さんはキョトンとした顔で
ちょっと首を傾げた


「あの、いきなりなんですけど」
「はい?」

顔を覆ったままで
指のスキマから梨本さんを見る


「僕ね、バラの香りがするとあなたに逢いたくなるんです」


顔が火照っていくのがわかる
わたしはそのまま俯いて
目をギュッと隠した

梨本さん…あなたって人は…


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