深想シンドローム


「だから、この辺じゃミチルくんを知らない人は居ないんだよ!」

「へ、へぇ…。」


ヒナちゃんの熱弁に圧倒されたまま、物理室へと辿り着く。


実験中もヒナちゃんの“ミチルくん情報”は延々続き、おかげで全然授業どころじゃなかった。


そして、そんな中
新たに知ったこと。



ミチルくんは、どうやら問題を起こして留年し、あたしたちと同じ一年生なんだって。


「そんなことも知らなかったの!?」

と、明日香ちゃんに驚かれたけれど仕方ない。


だって興味がなかったんだもん。

彼はほとんど学校に顔を出さないし、あたしみたいに一度も見たことない人だって居る。


そもそも、見たことも話したこともない人に興味なんて湧かない。


ましてや、それが
不良と呼ばれる類の人であるなら尚更。


喧嘩なんて、そんな野蛮なことする人

あたしは絶対嫌だ。



そう言ったあたしに、ヒナちゃんは

「ミチルくんを見たら、そんなことは言えないよ?」

と意味不明なことを言って来た。



「何で?」

「だって、超かっこいいから!」


…はいぃぃ?


「絶対好きになっちゃうよ!」


いえいえ。

絶対ございません、そんなこと。




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