境界上

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―――は？

あの冷静な蓮が殴り合い？ 乱闘？


この際、付き合いの短い宮坂くんはさておいて。

その蓮らしからぬ行動に一気に思考が行き詰まる。


「あ～ヤバい！
部長にコピー頼まれてたの忘れてた！」


「げ―っ！ じゃあうちらもそろそろ戻んなきゃネチネチ部長の餌食だよ～」


「ひー、急げぇ」



……とりあえずは、ひとしきり喋って化粧を塗りたくった女子社員達がダッシュで消えた後。


――ｶﾞﾁｬﾝｯ!


一つの確証を得るため個室から飛び出し、シャツを脱いで大きな鏡越しに背中をチェックした。


「――げっ」


蓮相手に完全に油断していた。

迂闊も迂闊。ここ数年のワースト1､2を争う大迂闊。


不覚にもA子(仮)の発言は嘘ではなかったらしい。


私の肩から肩甲骨、腰にかけて、本当にくっきりと存在していたいくつかの赤い痕。


……タイム！


動揺する自身の心に待ったを掛け、ザッとこの3年という年月を振り返る。


「…………。」


でも、やはりこんなことは初めてで。


……やばい。拍車を掛けて頭が回らない。