境界上
.


さて、どうしたものか。


アタシの現在地は玄関前。

あっちの現在地はすぐ左手前の寝室ではなく、その数メートル先のリビング。


幸か不幸か。

この数メートルと合い鍵と“馬鹿デカい鳴き声”のおかげで、リビングからこちらの存在は気付かれていない。



なら――今日は来なかったことにしよう。



蓮の為に時間を割き、文句も要件も告げられぬまま引き返すのは非常に癪だが。


現時点での“介入”によるリスクは、どうシュミレートしても高すぎる。

(修羅場なんてまっぴら御免だ。)


これ以上の大失態はそれ以上の癪に障る。


それに、今すぐ割って入らなければならない程、緊急性の高い要件でもなければ。

後何ラウンド続くか知れない“ソレ”を待ってやる程こちらも暇じゃない。


「―――……。」



ジリジリ苛立つ感情をそのままに、アタシは蓮のマンションを後にした。






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