境界上
.


行きつけのバーに繰り出し、苛立ちの特効薬にキツメのドライ・マティーニを即座に胃へ流し込む。


熱い。痛い。

でも、今はもっとキツい方がいい。



――『……んっ、れっ、蓮くんっ好き、好き……あっ!
やんっ――イッちゃうぅ……っ』



……聴覚にベッタリこびりついたきり、離れないさっきの戯言。

耳にしただけで興醒めする声を上げる女だった。


――反吐が出そうだわ。


あんなバカ五月蝿いだけの女とアタシが同等の扱いなワケ?

あんな耳障りな女を相手にする程、蓮は安い男だったワケ?


「……つくづく鬱陶しい」


苛立ちが加速し、更にアルコール治療が急ピッチで進んでいく。





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