境界上
.



―――止めてよ。



「…ベソなんて掻いてない、」


「言うと思った」


“わよ”を言い終わらぬ内に蓮に遮ぎられたかと思うと、引き戻されたばかりのカラダが一気にベッドへ沈む。


「ちょっと……」



“止めてよ”



失態続きのアタシでも流石に分かる。

今のアタシが、決して口にしてはならない禁句ワード。


これは蓮の挑発だ。

今更の関係で、恥じらう理由も極上と知る快楽を拒む理由もアタシにはない。

理由は、ない。


「“ちょっと”、なに?」


確かに。自分の迂闊さと、あんな女と同等の扱いをされていた事実に苛立っていたのは否定できないけれど。


「……背中に痕、付けないでよ」


けれど。

ベッドに組み敷かれた現状で、そんなつまらないことをいつまでも引きずっているのはもっと癪に触る。



「――言うと思った」



アタシの望みは、面倒を省いた純度の高い刺激だけだもの。








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