君と竜が望んだ世界
──頭の中をよく知った声が響く。

『敵の力を正確に測り、その強さを認める、あるいは己の弱さを認める。時には負けを認めることも、生きていく上では……』──


……わかってる。わかりきってる。こんな時なのに、今、ちょうど目の前にいる人が、昔、よく言っていた台詞を思い出した。


 だがのんびり思い出に浸っている場合も、負けを認めて降参する暇もないようだ。


 もとより、“降参”等という選択肢が書かれたカードは、今のロイからは限りなく遠くにあるに違いない。


 少なくとも視野には“悪夢”という名の反撃カードしか落ちてはいない。どこもかしこも、ハーヴェイがばらまいた答えの一つしかないカードだらけだろう。





 意を決してハーヴェイを見る。ソレは、綺麗な笑みだった。


 逃げたくもなる、かつての上司で先輩で鬼教官からの『反撃開始の合図』は。



 始まったハーヴェイの反撃を近くで見ていた生徒のほとんどは……二人の体の動きを追うのに必死だった。

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