僕は君のもの
書道室に足を踏み入れた途端、手首を掴まれた。
「どーゆーつもり?」
床に座り込んだ中村先輩が美紀を見上げる。
美紀はゆっくりと教室のドアを閉めた。
「何が?」
「さっきのアレ。」
「そのまんまの意味だよ?」
座ったままの先輩を見下げる。
「あいつを追っ払う為のウソ?」
「一応本気。」
「一応って…。」
先輩は笑いながらうなだれる。
手は美紀の手首を掴んだままだ。
「直哉は?」
その声はいつもより少し低い気がした。
きっと下を向いているせいだよね。
彼の表情は見えない。