僕は君のもの
少しの静寂をやぶったのは美紀だった。
「どういう意味?」
「どういうって…。」
中村先輩は顔を上げると前歯が見えるほど下唇を噛みながら美紀を見た。
「俺は、前から美紀ちゃんのことが好きだからぶっちゃけすっげー嬉しい。だけど美紀ちゃんが好きなのは俺じゃないだろ?」
美紀はそっと手首から中村先輩の手を外した。
「遠くの親戚より近くの他人って言うでしょ?」
その手を握り締める。
「美紀が直ちゃんのことこれっぽっちも考えられなくなるくらい夢中にさせてよ。」
そしてしゃがみこんで先輩の顔を覗き込んだ。
「できない?」
握った手が離されたかと思ったらそれはすぐに美紀の背中に回された。
「がんばる。」
力のこもる腕に応えるかのように美紀も先輩の背中に腕をまわした。