アリス逃走中
猫耳の男は身軽に木から飛び降りた。結構な高さだったが、着地した時に音がほとんどしなかった。
アリスはその様子を口をぽかーんと開けて見ていた。
「…お、お前誰だよ!」
アリスは緊張し過ぎて噛んだ。そして微妙に後退りして男との距離を離そうとした。
「僕?僕はチェシャ猫…ただの飼い猫だよ。」
「飼い猫?」
「そう。君は?…初めて見る顔だけど………もしかしてアリス?」
そう言ってチェシャ猫がアリスを見た。
「なんで俺の名前知ってんだよ!」
アリスが声を荒げて言うが男はそれを全く気にせずに話した。
「やっぱりね…僕アリスに会うの初めてじゃないんだ。前見たアリスは可愛い子で、君とは違うけど…なんとなく雰囲気が似てたんだよ。」
「…そのアリスみたいに可愛くなくて悪かったな。で、そのアリスは?」
チェシャ猫は少し言うのに躊躇したが、小さな声で言った。
「……死んだ。」