バニラ

『あ…りがとう。』


俺は手に触れていたさっき使ったばかりのライターをコートのポケットに押し込み

素直に彼女のライターで煙草に火を付けた。






フーッ…

彼女が煙を吐き出すと

少し濁ったバニラの香りがした。





何か…話さなくては。

自ら飛び込んだ気まずい空気に耐え兼ねて
怖ず怖ずと口を開く。




『さっき…会場に居たよね?』

驚いたように振り返る彼女。



あぁ、わかった。
あの恋愛ドラマに出てる女優に似てるんだ。

なんて勝手に納得してると


訝しげに首を傾げていた彼女の顔が、ぱっと輝いた。



『…あぁ!ボーカルくん?』





その程度かよ。




< 7 / 41 >

この作品をシェア

pagetop