バニラ
『あ…りがとう。』
俺は手に触れていたさっき使ったばかりのライターをコートのポケットに押し込み
素直に彼女のライターで煙草に火を付けた。
フーッ…
彼女が煙を吐き出すと
少し濁ったバニラの香りがした。
何か…話さなくては。
自ら飛び込んだ気まずい空気に耐え兼ねて
怖ず怖ずと口を開く。
『さっき…会場に居たよね?』
驚いたように振り返る彼女。
あぁ、わかった。
あの恋愛ドラマに出てる女優に似てるんだ。
なんて勝手に納得してると
訝しげに首を傾げていた彼女の顔が、ぱっと輝いた。
『…あぁ!ボーカルくん?』
その程度かよ。