その唇、林檎味-デキアイコウハイ。
2nd-オセオセコウハイ。

*緊急、救出要請

 薄ら聞こえる、何かの音。戻って来た意識、重い瞼を押し上げると、第一に目に入ったのは、石膏ボードの天井。カーテンレールから伝って、薄桃のカーテンに視線が映る。

 頭の中が鮮明になっていくにつれて、自分が現在いる場所は保健室のベッドなのだと自覚する。上半身を起こし、一つ息を吐いた。

 何故このような状況になったのだろう、必死に記憶を手繰り寄せるのだけど、答えに辿り着くより先に、未沙の声が届いた。


「凛呼!大丈夫?」


 カーテンの隙間の向こうに彼女の姿を認め、上半身を起こす。

 軽く休息を取った身体は寧ろ普段より軽く、意識の飛んで行った経緯が明確には思い出せない。


「長岡さん、保健室だから静かにね」


 養護の先生が未沙を諌める声、すいません、と謝罪の念の籠っていない声に、私も苦笑。

 その一方で、状況の説明を求めなければ、と口を開く。

 しかしその束の間、保健室のドアが開く音とともに、不穏な声が。


「先輩、目ぇ覚めました?」


 切迫とまでは行かずとも、少々の焦りを孕んだ声。聞いただけで、逃げ出したくなる。


「そうみたいよー?何、走ってきたの?」


 息切れまでは聞いて取れなかったが、そう思えるような様子だったのだろうか。

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