大空の唄


そうして俺らがスカウト
されたのは高校最後のライブ


もちろん身内のない俺らが
進学出来るわけもなく


だからと言ってみんな
将来の目標があるわけでもなく


しばらくフリーターをして
何とか生き延びようなんて
甘い考えで3人とも受験で忙しい高校3年の間も


狂ったようにバンドに明け暮れていた


俺たちは最高に運がよかったと思う


高校最後のライブに有名な音楽事務所の社長が見に来ていて


本当に運良くそのおっさんの目に入ったみたいで


『君たち、デビューしてみない?』


そうやって声をかけられたんだ


あの時は浮かれたね〜


自分たちの努力が認められた
存在が認められた


それが形として現れた瞬間だったから


「すごい!さすが…」


でもね、喜びもつかの間だった


「どういうこと?」


デビューする手続きのとき
俺らは衝撃的な事実を知った


それは本人も知らなかった
空の悲しい過去


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