クールな王子様
「唯璃に。苦しんでいる唯璃に。
俺は何もできてない。」
そう言われた時、正直
───戸惑った。
私が苦しんでいること、
なんで、気付いたの。
なんで、気付いてしまったの。
何もできてなくていいから。
……そう思った。
本当は、
誰かに助けてもらいたいのに。
これを言うには、
勇気が足りなくて。
それに、とても情けない決断だと笑われてしまう。
あの時のように、
理解できないと言われてしまう。
私は自分の掌を強く握りしめた。
頭の中にあの時の声がよみがえって、胸が苦しくなる。
「苦しんでいる何かを今、俺は、唯璃に聞かない。
だって…、聞かれたくないこと…だろ?」
少し、悲しそうに。
でも、真剣な表情で望月はそう言った。
…思わず、目を見開いた。
なんで、そこまで
私のことを考えてくれるの?
まだ、出会ったばかりなのに。
「言えないことを無理矢理聞こうだなんて思ってない。」
そう言われたのは、2人目だ。
私のことを知らない人や、
いや、知っている人も。
無理矢理でも聞こうとしてきた。
自分でも言いたくないことを
なんで、他人に教えなきゃいけないのか。
私には分からなかった。