クールな王子様
でも、あの時のひなちゃんは今の望月と同じだった。
『私は、唯璃が言いたくないなら聞かない。』
あの日の夜、いきなりひなちゃんの家に行った。
来たっきり、黙っていた私にひなちゃんが言ってくれた言葉。
その言葉で無意識に涙が流れた。
何故か、分からない。
でも、一番言ってほしかった言葉だった。
『なんで?!』
『意味が分からない!!』
私が決めたことに多くの人は理解してくれなかった。
────両親でさえも。
最初に言ったときは、理解してもらえなかった。
今はもう理解してもらえたけど。
でも、一番最初の私の味方は
……ひなちゃん。
何も言わず、ただ頷いて、頭を撫でてくれた。
今、望月に抱きしめられているのを感じ、その時を思い出して涙が流れそうになった。
なんでなんだろう。
望月がなんで、
そんなことを言うんだろう。
なんで、そんな……
────優しいんだろう。
「でも、俺は泣きそうな顔して、笑ってる奴を見てないふりできるほど器用な奴じゃないんだよ。」
そんな風に言える望月は、
やっぱりすごいよ。
君は、何故か他の人と違うんだ。
なんで、今すごく真剣な表情をしているの。
なんで、そんなに優しい言葉をかけてくれるの。
なんで……────
私の心を温かくする言葉ばかりを言うの。
望月はやっぱりすごいじゃんか。