sweet lovers B【BL】
 すぐ近くにある無人の教室に入って、俺は盛大な溜息を吐く。

「みはねチャンのチョコ、貰いそびれちゃったじゃん」

 悪びれることなく言う成都に、軽く苛立ちを感じる。

「何が『みはねちゃん』だ! お前、さっき俺に何を言ったか忘れたのか!?」

 成都の腕を掴んだままの右手に思わず力を込めてしまうと、「痛いってば」と、成都が顔をしかめた。

「……そんなの、清治が悪いんだろ。それにさっきのは、ファンの子からのチョコで……」

「だったら俺が弓香のチョコを貰うのだって間違ってない。弓香の何が気に入らないんだ」

「……清治が、嬉しそうにしてるから。弓香のチョコ、嬉しかったんでしょ?」

 俺から目を背けて言う成都の声は、投げやりになっている。

「俺、弓香が清治のこと好きなの、知ってたんだ」

 知っていて、それでも、弓香の邪魔をしたってことは。

「成都……」

 成都を想う気持ちが、愛おしさが、込み上げてくる。
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