キミが好き




「さ、行くか?」



相良さんを見送った山田は振り返って、あたしに手を差し出すとそう言った。



ドキン。



長くて、綺麗な指。



爪だって男のくせに、女爪だし。



ぼーっとして、掴まろうとしないあたしに山田は、


「ほーら、行かねぇの?泣き虫ちゃん」



と、座り込んであたしの顔を覗いてくる。



その行動が恥ずかしくて。


泣き顔を見られるのが恥ずかしくて。



あたしは、つい山田を顔面パンチ。



「うお…っ!」


あ、やばいっ!



そう思ったときには山田は顔を押さえ、尻餅をついていた。




あー、あたしのバカバカ。


「山田!?大丈夫?…ご、ごめんねっ?」



あたしは、慌てて山田の顔を覗き込む。




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