ラヴレス








「孤児のことを何ひとつ解ってないバカが、偉そうにチャリティ活動なんて大したもんだよ、…キアラン・アナベルト・シュナウザー様」


彼女を浅慮、と思い込んでいた自分を今すぐ殴ってやりたくなった。

彼女はなにもかも承知だったのだ。


ただ叔父の願いを叶える為だけに、全国の養護施設を混乱させたキアランを。

口先ばかりのチャリティを展開する、ビジネスマンのキアランを。

無知で薄弱な、キアランを。



「…まぁ、支援されないよりはマシだろうけどね」


自国の政策が行き届かないからこそ、そんな事を言い出す資産家が現れるのだ。

何故、キアランがわざわざ母国イギリスではなく、日本に焦点を当てたかは知らないが――――。






「上辺だけの善意なんて要らない」



「チィネエ」は、心底から軽蔑するような視線をキアランへと向けた。











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