ラブ☆ヴォイス
「えっと…あっくん?」

 額が離れて、あっくんが顔を唯から背ける。耳まで真っ赤だ。

「なんで、真っ赤…。」
「お前が可愛すぎるのが悪い。」
「へっ?」

 ちゅ、と甘い甘い音がした。それこそさっきのダミーヘッドマイクで収録したCDの音源さながらのリアルな音が、耳元で。
 頬に触れたあっくんの唇が、もう一度わざとらしく甘いリップ音を鳴らす。

「ダミヘの気分、味わえただろ?」
「っ…や、やっぱりやだ!」
「俺もやだよ、お前に泣かれんの。だからもう、このテの仕事は受けないことにする。エロい声はお前だけの特権ってことにしてやるよ。」
「っ…そ、そういうことを言ったんじゃない!」
「そういうことだろーが!俺の喘ぎ声もキスの音も全部自分だけが聴きたいっつってんだろ?」
「ち、違うもん!」
「違くねーよ。でも、俺も嫌だから。お前の喘ぎ声とか他の奴に聞かせんの。」
「あっ、喘がないもんあたし!」
「喘ぐだろ!俺の前でだけ!」

 唯の方まで真っ赤になってきた。確かに喘ぐのはあっくんの前でだけだ。だからあっくんにも同じことを要求したい。

「…あっくん。」
「何だよ。」
「…キス、して?」
「あ?」
「あたしのヤキモチ、いらないって…教えてほしい。あたし、トクベツだって。」

 その続きはもう言えない。あっくんの唇が唯のそれに甘く重なった。

「ヤキモチのその先。お前、後悔するなよ?お前のためだけの〝ダミヘ〟だ。」

 あっくんの腕が唯の身体を持ち上げた。

「続きは、最後まで。」

 あっくんの声が甘く響いた。


*fin*

→次の章に続きます。
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