ラブ☆ヴォイス
「ある意味〝いい子〟なお前を崩したかったってのもある。ごめんな、物分かりいい奴のフリさせて。」
「っ…。」

 一度止まったはずの涙が戻ってくる。悲しいわけじゃない。ただ、あっくんの優しさがあまりにも温かくて涙が止まらない。

「いい子のフリ、できてなかったってことじゃん~…。」
「できてたできてた。俺がちゃんと意識してお前のこと見てたから気付いただけ。あと、あー…あのうぜぇくそ女の件もあったしな。」
「…あっくん、口悪い。」
「大体なんであんな女と俺の熱愛みたいな記事がネット上を駆け巡ってんだよ。たまたま同じ作品のメインで共演して、それ以降共演が続いただけだっつーのに…。」
「…だって、お似合いだもん。」

 唯は泣き顔のまま、口をとがらせた。悔しいけれど、あっくんと噂になっている女性の声優は美人なのだ。それこそ、唯が引け目を感じてしまうくらいには。

「そこでお前はすかさず『あっくんはあたしのだもん!』だろ?」
「あっくんは…あたしの、…だもん。」
「なんだよ、それ。」

 あっくんが苦笑した。こつんと額を重ねて、あっくんは優しい笑みを零す。

「あたしばっかりがヤキモチ妬いててずるい。あたしばっかりがあっくんを好きみたい。」
「はぁ?」
「そうじゃないって、ちゃんと分かってるのに。でも、ヤキモチ隠すので精一杯になっちゃう。あっくんの人気が凄いんだもん。あのダミーヘッド、だっけ?あれだって、きっとあっくんの声が大好きな子にとってはすっごく嬉しいものだと思う。あっくんの声があんなに近くで聞こえるなんて。でも…なんかやだ。あれだけは…あたしの特権…で、あってほしい…って思っちゃ、ダメ、かな?」
「っ…あーくそ!そこでその顔する方がダメだっつの!」

 あっくんの顔が真っ赤に染まる。
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