恋に落ちた、この瞬間。
昼間なんて俺を怖がって目すら合わせなかったくせに。 今は服を握りしめるまで、まおが俺に心を許してくれた。

まさか…… こんな短時間で心を開くなんて思ってもいなかった。


「知らないひとがいたんだよ」


知らない人って、たぶんそれは“俺”だわ。


「あたしの名前よぶんだよ?」


「うん」


そりゃ、咳をしていたからな。 …… 心配だったんだよ。

こんな時にゼンソクの発作が起きても困るし、俺だってどうしていいか分からないし。


「なんでここにいるの?」


俺の胸に埋めていた顔をあげて…… バッチリまおと目が合った。

それも、スッゲー近く。


「なんでここにいるの?」


そんな何回も聞くなよ。


「いっくん」


言わないと…… ダメだよな。

なんか嫌だな。
まおが心配になって見に来たってなんて…… 言いたくねー。


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