恋に落ちた、この瞬間。
ちょっと待て、まお。 俺の指を握ったままだろ?


いつのまにか体を俺の方に向けて、しっかり目を閉じている。


指を握ったまま眠る気かよ……。


まおに握られている俺の左手は布団の柔らかさと、まおの温かさを感じとる。

女のまおがいくら力強くにぎっても、男の俺の方がはるかに力は強い。

抜き取ることも可能だが……。


…… なんでだろうな。

まおから指を抜くことが出来なかった。



「スゥー、スゥー」


しばらくすると、規則正しい寝息が聞こえる。


「まお?」


よしっ、反応しない。


やっと寝たか……。 これじゃあ“見張り”と言うより“お守り”だよな。


まおだって一応、俺と一緒で16なんだけど……。

どこか、赤ちゃん…… 子供っぽい。


ゆっくり指を引き抜いても……。


「――― っっ」


「………」


反応、無し。

まおに気付かれないように、そっと部屋を後にした。


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