維新なんてクソ食らえ後始末が大変でしょ。浅木の巻
次の日

浅木は重爺と良庵の診療所に向かった。

良庵はここらでは腕の良い医者として知られていた。


良庵が貧乏人から金を受け取らないこともあってか医者として良い暮らしをしているという感じではない。


診療所の敷地は広かったが診療所そのものはそれほど大きくない。


玄関先で声をかけた。


診療所の近くに住んでいてよく遊びに来ている幼い姉妹がまりを手に持って出てきた。


「先生は居ないよ」

声を揃えて告げた。

二人は仕方なく待っていた。


突然どやどやと人の声が近づいてきた。

屋根から落ちて、怪我をした大工が運ばれてきた。


「先生は」


幼い姉妹が良庵を呼びに行った。


大工は苦しがっていた。


「早く止血しないと。爺様手を貸して下さい」


浅木は診療室内を見渡すして、薬と包帯などを探し出して手際よく治療を始めた。


怪我人の治療が終わった頃、良庵が息を切らせながら戻ってきた。


良庵は浅木の後ろから、彼が施した処置をみた。


「お前がやったのか」


「はい」

と、浅木が落ち着いて答えた。

脇から重爺が言った。

「彼がこの前話していた浅木君だ」
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