愛しのマイ☆ドクター
ターミナルケア

最後の日々

病室に戻ってくるとお母さんが中で待っていた



部屋にはファンの人達から送られてきた

千羽鶴や花束やプレゼントが

テーブルや窓際を埋め尽くすように

並べられていた



心配そうなお母さんに

『大丈夫ですよ』と岡崎さんが言った



岡崎さんは美羽の衣装を脱がせて

パジャマに着替えさせた



そして僕も手伝って美羽をベッドに寝かせた



その間美羽は

一言も発しなかった



僕は簡単に彼女の診察を済ませて

院長先生に報告しようと

病室を出たところで

社長さんに呼び止められた



『先生・・・今日は・・・本当にお世話になりました』



『いえ・・・僕は何もしていませんから・・・』



『美羽は・・・ あの子は・・・ 本当に・・・強い子です・・・ アイドルになるために生まれてきたような子です・・・ 私は今日心からそう思いました・・・』



『・・・』



『先生・・・ あとは・・・ 宜しくお願いします』



社長さんはそう言って深々と頭を下げて立ち去っていった



芸能界という浮き沈みの激しい世界で

社長を続けてきた男の人らしく

その後姿はさっそうとしていた



僕はアイドルと呼ばれる存在の影で

社長さんのような人達が

日夜頑張っているんだなと

あらためて思った





そして

その夜から

美羽の意識が

なくなった



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